三島由紀夫「春の雪」第三弾いきたいと思います!せっかくなので!いつも本を読んだらそれでおしまいにしてしまうけど、掘り下げてみたら楽しいかな?と思ったのでやってみました。
「春の雪」は大正初期が舞台で、伯爵やら公爵やらが実在してて、運転席と客席がセパレートな自動車とか、馬車とか使われてたり、どこまで本当なのか、内田にはわかりません。
もしかして全部本当なの・・・?どうなの・・・?
あと難しい言葉も多くて、なにそれ?なものや変な動詞とか、今はない制度のものとか、調べてみました。
三島由紀夫「春の雪」が書かれた時代と作中の時代
春の雪は「豊饒の海」という4部作の1作目として1965年(昭和40年)から1967年(昭和42年)にかけて、雑誌「新潮」で連載として発表された作品です。
1960年代は高度経済成長期真っ盛りの時代です。
また、舞台は大正初期(大正のはじまりは1912年)なので、半世紀昔の話を書いたということですね。
そしてwikipediaの豊饒の海のページに
三島は『春の雪』において、「会話のはしばしにまで、古い上流階級の言葉の再現」をしたとし、「あと十年もたてば、これらの言葉は全くの死語となるであらう」と述べ[29]、
とありました。書いてる時点で、「意味はわかるけど昔の言葉」を使ったってことですかね。
なるほどわからんわけだ!
大正初期の移動手段事情 〜馬車と人力車から自動車の登場〜
物語を読んでいると「俥」が出てくるんですが、それが最初は普通に自動車のことだと思っていたらどうやら幌(ほろ)とか車夫とか言うので、しばらくして「これは人力車だな?」と気づきました。
どうやら「俥」とニンベンがついてるのは人力車を指すらしいです。
でも一度だけ、自動車が登場しました。東京から鎌倉に一晩で行って帰る時です。その車についてはこう書かれていました。
五井の持っている一九一二年型の最新のフォードは、セルフ・スタータアの発明によって、もう始動のためにいちいち車から降りなければならぬような運転手泣かせの車ではなくなっていた。
二段変速機つきの普通のT型だったが、黒塗りに細い朱の線が扉をふち取り、幌に包まれた後部座席だけはなお馬車の面影をとどめていた。
運転手に話しかけるときは通話管に口をあて、運転手の耳もとにひらいている喇叭(ラッパ)へ声を伝えるのであった。
屋根にはスペア・タイヤのほかに荷台がつき、長途の旅行に耐えるようにできていた。
三島由紀夫「春の雪」より(斜体部、改行は筆者による)
「マジっすか」と疑問の連続です。始動のために車から降りてた?二段変速?T型?話しかけるときはラッパ?
手っ取り早く画像を探すとこんな感じ。
(画像上)フォード・モデルTラナバウト(1911年以前の最初期型) 引用元:
フォード・モデルT - Wikipedia
(画像上)国産吉田式"タクリー号"(1907年・日本)引用元:
自動車誕生から今日までの自動車史(前編) | よくわかる自動車歴史館 | GAZOO.com
記述に合致するフォードTはなく、下の画像の「吉田式」というのがなんとなく似ている気がします。ラッパは見当たらないけど。
おしゃれだなあ、ぜひ乗ってみたいなあ。どこかで乗らせてもらえないものかな?
amazonでこんなのもありました。16分の1の模型です。
ドイツレベル
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これの写真に、後ろから見たものがあったんですが、
これが客席ですか?運転手だけ室内で、他の人は外ってことなのか?結構風が来て寒そうです。まあ馬車とかも寒いと思うけど。よくわからんです。
なおwikipediaによるとフォードTは日本で最初にたくさん売れた自動車らしく、県内初の自動車がそのフォードTだったところもあるくらいだそう。特にタクシーとしてはボディなしで日本に来て、日本製の箱をつけるパターンも多かったと書いてあります。
作中の自動車も、そういうフォードの公式のタイプではなく改造されたものだったのかもしれないです。
それにしてもかっこいい。下からニョキっとなってるハンドルもかっこいいし、手動のパフパフもかっこいいし、黒ボディに金のラインがほんとかっこいい。いいなあ!
伯爵、侯爵って何?
明治2年から昭和22年に日本国憲法が立憲するまであった華族という決まりで叙せられていたらしく、侯爵は二番目に偉い家柄、伯爵は三番目に偉い家柄。
一番偉いのは公爵で、徳川家や岩倉家がそれにあたる。四番目は子爵、五番目は男爵。
江戸時代までの公家・武家、明治維新で功績を挙げたものなどが爵位を得た。
らしいです。難しいです。
参考リンク:
華族 (かぞく)とは【ピクシブ百科事典】
語彙集 〜知らない言葉を調べてみようのコーナー〜
嫡子(ちゃくし):家督を継ぐ者。普通は長男。また、一般的にその家を継ぐ人。てきし。
撞球(どうきゅう):ビリヤード
と見こう見(とみこうみ)する:あっちを見たり、こっちを見たりすること。
書生(しょせい):勉学を本分とする者。特に明治・大正期では住まわせてもらう代わりに雑用や家庭教師をする学生。
奢侈(しゃし):身分を超えた贅沢。
自分の肉体の小さな擬宝珠:玉ねぎのような形状の、寺や橋の欄干に付けられている飾り。ここでは清明の乳首。
御門跡:仏教の宗派の中で一番偉い僧侶。
おのがじし語りたがった:各自それぞれが。(おの=おのれの、自分の、自分が)
附文:断り書き。手紙。
さなきだに:ただでさえ。そうでなくてさえ。
あてこすりを言う:当てつけ、皮肉を言う。
〜とは言い条、(〜とはいいじょう):とは言うものの、。
蓮葉(はすは)に言う:軽薄に、軽率に言う。
口を糊する:貧乏ながら生計を立てる。糊するとは粥を食べる的な意味。(封筒をペロペロして糊つけしてるって意味かと思った!違った!)
吝嗇(りんしょく):ケチ
料理たのでございます:調べてみたけど「りょうりた」と料理を動詞として使う用法は現在見つからないです。「料理する」はサ行変格活用で「料理した」になると思うのですが、「料理た」って使ってたんでしょうか。「詐欺った」みたいなもんでしょうか。
参考リンク:
コトバンク [ 時事問題、ニュースもわかるネット百科事典 ]
国語・英和・和英・類語・中国語辞書検索 - goo辞書
以上、現代でお金持ちになるより大正っていう時代の華族になってみたかったなあと思いました。